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-私案-M.ラヴェル「ボレロ」独奏部分へのアプローチ
~「Daily Training for Bassoon デイリートレーニング集(2023.01 版)」
(Primary-f/向実庵・刊)に基づく(舩生好幸)

*以下のコンテンツは、標題の練習曲集の巻末に収録した「特典」の内容に一部加筆してご紹介いたします。

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M.ラヴェル「ボレロ」の1番バスーンパートは、これまでに4回ほどステージで演奏しました。

その中でポイントとなったのは2度目のステージでした。緊張から指がもつれて有名な独奏部をミスしてしまい、当然ながら周囲からの評価も芳しいものはありませんでした。

 

これを反省材料に、その時点までの「出たとこ勝負」的な意識及び練習方法を見直し、普段から演奏会の本番を想定し、確実に演奏に成功できるよう、以下のような練習のプロセスを考え、実行するようにしました。

 

1)最高音域を安定的に発音できるよう練習する

以下はボレロに限らず、日々の個人練習で行うウォーミングアップの内容そのものですが、ここでは取り出して少し詳しくご説明します。

楽曲の練習に先立ち、以下のようなウォーミングアップを行います。

 

・ロングトーンを行い、呼吸と演奏に関連する筋肉を整えます。

音域は、最低音B♭から、余裕を持てるよう、ボレロの最高音=Hi-D♭を超えるHi-D程度まで確実に発音し維持できるよう練習します。

 

・指使いの柔軟性を養うことと、旋律演奏の基礎である、音階練習(12の調の長音階。なるべく短音階も同様に)を行います。

こちらも音域は最低音B♭から、ボレロの最高音=Hi-D♭を超えるHi-D程度までをカバーできるよう練習します。

 

(上記練習内容の具体的な楽譜例は、標題の練習曲集・第1章及び第2章に収録しています。この練習曲集にご興味ある方はショップのページもご参照ください。

 

・また、練習の過程で、リードやボーカルを見直したり、楽器のコンディションの問題点に気付く場合もあります。

スムーズに演奏できるようリードの調整や発音しやすいボーカルへ交換を行い、楽器に問題がある場合は速やかに調整に出し、演奏会の当日はベストコンディションで臨めるようにします。

2)独奏部分に含まれる厄介な指使いの克服方法

・前述の、指がもつれてミスしたところとは、1番バスーンパートの最高音Hi-D♭を演奏した直後の下降部分です。(下記・譜例Aの6-7小節目=オリジナルスコアの46~47小節目。)

Hi-D♭からの下降音形の繰り返しで構成されるこの部分は、私以外にも指がもつれやすい方がいらっしゃるのではないかと思います。

BOLERO-furei-A.jpg

・対策として考案したのが、下記・譜例Bの練習方法です。トリッキーな部分の音を並べてアルペジオ風に構成し、指使いが滑らかに動くようになるまで繰り返し練習できるように工夫しました。

 

・練習の際はメトロノームをかけて、始めはゆっくり、確実に演奏できるテンポから始めて、徐々に本来のテンポ(♩=72付近)にまで引き上げるようにします。

 

・練習の始めにはなかなか難しい指使いと感じる場合でも、日数をかけて、何度もさらっていくうちに指がスムーズに動くようになります。

BOLERO-furei-B.jpg

同じファゴット奏者でも、一人ひとりが課題と感じる内容は異なり、解決法もそれぞれに存在すると思いますが、もし私と同様なお悩みを持たれた方は、上記のアプローチを、一度同様に試されるのも良いのではないかと思います。

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