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執筆者の写真舩生 好幸

「指が回らない、細かい音符が演奏しにくい」なら音階練習に取り組みましょう

更新日:2023年12月11日

~私同様、不器用と自覚されるファゴット奏者の方へ~


投稿:舩生好幸(ファゴット愛好家・研究家)2023.5.6

(更新:2023.12.10)


楽譜・長音階の練習
楽譜イメージ(長音階の練習・拙著「デイリートレーニング集」より)

40年近い昔、私は大学入学と同時に学内のオーケストラに入り、ファゴットを始めました。


2人いたファゴットの同級生は高校からの経験者で、器用な人たちでもあったので、彼らが比較的簡単にマスターしていく楽曲を、私は指が回らず、音が出ず、となかなかものにできず、自分自身に腹が立ったり、先行きに暗澹たる気持ちになったりすることが何度もありました。


そのうち、実力向上のためには楽曲だけではなく、基礎的なトレーニングにもっと取り組まねばならない、と反省し、私が音階練習に比較的まじめに取り組むようになったのは、大学生活も後半に入った3年生の頃でした。秋に、自分の楽器を持つことができたことも大きかったです。


音階練習(当時は長音階だけでしたが)を日課練習として行うようになると、

オーケストラで取り上げる楽曲(ベートーヴェンやブラームス、チャイコフスキー等々、学生オケがよく取り上げるメジャーな作品)について、完ぺきとは言えないまでも、従来は”歯が立たなかった”細かい音符も何とか音にできるようになってきました。


そうなると俄然、楽器の演奏が楽しくなった記憶があります。


〇今からでも遅くはありません

もしも、私のように不器用とか、指が回りにくいファゴット奏者の方で、これまで十分に音階練習を行ってこなかった、と自覚される方は、今からでも遅くありません。


これからは、日頃の練習に12の調の音階練習(少なくとも長音階を全部。できるだけ短音階も一緒に)を組み込んで、指の柔軟性を養うとよいと思います。


そうすれば、指が以前よりも回るようになり、ファゴットの演奏が一段と楽しくなります。


〇音楽の基本は音階。そして音階練習すると未来に出会う楽曲の事前練習にも

調性感の乏しい前衛的な作品はさておき、通常の音楽は音階が基本になっていると言えます。


ですから、音階練習をすることは、現在、演奏会などに向けて取り組んでいる楽曲のための練習になるだけでなく、今後出会う楽曲の事前準備をすることにもなると思います。


〇最初は、楽譜を見ながらが効率が良いです

不器用な私は、楽譜を見ないで長音階の12の調をある程度スムーズにできるようになるにはほぼ毎日のように練習しても半年程度かかりました。


後で考えますと、時間がかかった理由の一つには楽譜を見ずに練習していたせいもありました。楽譜を見ながらであればより早く上達したと思います。


これから取り組まれる方は、お手持ちの教則本を見直す、なければ音階練習を収録した教則本を探してくる、あるいは自分で楽譜を書き起こすなどして、練習に活用されるとよいです。


〇音階練習に使える教則本の一例

一例として、私の手元にある教則本からご紹介します。


*Weissenborn(ヴァイセンボーン)/初級者のためのファゴット練習曲・第1巻 Op.8-1(全音楽譜出版社、などから刊行)

 多くのファゴット奏者におなじみの教則本だと思います。12の長音階と、同じく12の旋律的短音階が掲載されています。上級者の場合、調によってはオクターブ上もさらってみるなど、高音域の練習を追加するとよいです。


*「朝練ファゴット 毎日の基礎練習30分」(大滝 雄久・著、全音楽譜出版社・刊)

 調号のないハ長調と並行調のイ短調(旋律的短音階)のセットで始まり、続いて♭系の長調と短調が調号を増やしつつ進み、続いて#5つのロ長調と嬰ト短調に移り、調号を減らしながら#1つのト長調とホ短調で締めます。


*「上達を約束する ファゴット・スケールレッスンと応用フレーズ集」(久保 祐子・著、オンキョウパブリッシュ・刊)

 章ごとに、12の長調と12の短調のスケールと、練習のための旋律が掲載されています。短音階は自然的・和声的・旋律的、と3種類が掲載されています。


*「Daily Training for Bassoon :デイリートレーニング集」(舩生 好幸・編著、Primary-f/向実庵・刊)

 恐縮ですが拙作もご紹介します。市民オケ等のファゴット奏者の方が効率よく日課練習を進められることを目標に編集しました。3オクターブ超の音域で長音階、和声的及び旋律的短音階の練習ができます。


また、次の教則本は全部の調を日課練習でさらうというより、先生のレッスンを受ける際の課題曲として、1,2曲さらってくるよう指定される、といった使い方が多いと思います。


*L.Milde(ミルデ)/「スケールとコード Op.24」

 見開き左のページは長調と並行調の短調のスケールの練習曲、右ページは同じ長調と短調の分散和音を主体とした練習曲が掲載されています。最後の25曲目は半音階進行の練習曲になっています。



〇練習するときは、テンポを急がず正確でスムーズな指使いを目指して

「指が回らないのだから、とにかく速いテンポで練習できるようにせねば。」と考えたくなるかもしれませんが、必ずしも早いテンポにこだわる必要はないと思います。


(無理なテンポで練習していると、腱鞘炎を起こす場合もありますのでご注意を。)


それよりも、練習中、指使いが正確であって、スムーズにできていることを確かめてください。


音階の一つの音を♪とするなら、♪=120程度のテンポで十分でしょう。


〇メトロノームとチューナーを手元に用意

指がうまく回らない場合は初めはゆっくり、できるテンポから始める必要があります。

メトロノームをかけて、ゆっくりから練習し、できるようになったら少しテンポを上げる、を繰り返し、目標のテンポに近づけてゆきます。


併せて音程にも注意を払いましょう。音階練習の間、チューナーも起動しておき、いつでも音程を確認できるようにしましょう。


両方が一体になった「チューナーメトロノーム」もありますので、活用しましょう。


〇短音階も練習を~ロマン派以降は短調の作品も多い~

音階練習でも、長音階が基本中の基本と言えると思いますが、ロマン派以降の音楽は短調の作品も多いです。

現在、演奏会に向けて練習している楽曲も、長調よりも短調の作品が多かったりしないでしょうか?


「ウォームアップ」や「将来出会う作品を事前に迎え撃つ」いずれの意味からも、短音階(和声的、旋律的の両方)もきちんとさらっておきましょう。

長音階だけの練習よりも、さらに指がスムーズに動くことが分かると思います。


音階練習に普段から取り組んでおくと、新しく取り組む楽曲中のややこしい指使いも、比較的スムーズにマスターできるようになります。

そうなれば、楽器の演奏が今まで以上に楽しめます。


(Primary-f/向実庵 代表)


<ご案内>

「デイリートレーニング集」

市民オーケストラなどのアマチュアFg奏者のご利用を想定した練習曲集です。

ロングトーン、音階、分散和音等を12の調&3オクターブ超の音域でトレーニングできます。楽曲の練習前にウォーミングアップが効率よく進められます。



詳細は下記URL(向実庵)へどうぞ。


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