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  • 執筆者の写真舩生 好幸

ISMSは情報セキュリティ、EMSは環境、ではQMSは??

更新日:2022年12月8日

投稿:舩生好幸


以前、私が会社内でQMSやISMSの普及推進を担う部署にいたことから、周囲の知人からISOマネジメントシステムとは何か、と質問され説明する機会がありました。


その際には、以下の3種類のISOマネジメントシステムを比べながらの説明を試みることが多かったです。


・情報セキュリティマネジメントシステム

 (=ISMS。ISO27001規格に基づく)


・環境マネジメントシステム

 (=EMS。ISO14001規格に基づく)


・品質マネジメントシステム

 (=QMS。ISO9001規格に基づく)


◆イメージしやすいISMSとEMS


上記3つのマネジメントシステムのうち、ISMSとEMSは説明が比較的容易でした。


ISMSは、

・機密性・完全性・可用性の3大要素で表現される組織の情報セキュリティを管理し達成するための仕組み。

→「ISMSで、サイバー犯罪から組織の情報を守る、情報漏えいを防止する。」


EMSは、

・組織の活動や製品・サービスが環境に及ぼす影響を管理し、健全な環境を達成するための仕組み。

→「EMSで、組織活動が環境破壊や公害を引き起こさないよう予防し管理する。」


といった説明で大抵わかってもらえます。イメージを思い描きやすいといえるでしょうか。


◆イメージしにくく、説明が難しいQMS


一方、品質マネジメントシステム(QMS)は、案外説明が難しいです。


「品質」と聞くと、

・工場で工業製品を仕様通りに均質に生産するためのルールや、そのルールに基づく仕組み

を思い描く方が多いです。


また1990年代頃でしょうか、各地の工場や建設現場などに、「ISO9001認証取得」といった看板も多く見られたことから、製造業や建設業のみを対象とする規格、と思う方も多かったです。


しかし、現行のISO規格に基づくQMSは、特定の工業製品の作り方の規則や、それに則った仕組みとは異なります。また、対象が製造業や建設業に限られるものでもありません。


◆現行ISO9001:2015規格に基づくQMSの特徴


現行の2015年版ISO規格に基づくQMSには、以下のような特徴があります。

・製品そのものより、製品を生み出す組織の仕組みに焦点をおきます。

・生産現場に限らず、製品を提供する組織全体の活動を視野に入れた仕組みです。

・顧客に商品として提供する無形の「サービス」も、有形の「製品」と同列に扱います。

・製造業や建設業のみならず、サービス業を含むあらゆる業種・業態に適用できます。


ここでQMSの定義を、現行の2015年版ISO9001規格に沿って書いてみますと、


「品質に関する、方針及び目標、並びにその目標を達成するためのプロセスを確立するための、相互に関連する又は相互に作用する、組織の一連の要素。」


といった表現になります。

ただ、これではまだ分かりやすいと言えませんね。


◆現行規格に沿ってQMSの作り方をたどってみる


そこで、品質マネジメントシステム(QMS)の何たるかを少しでも理解しやすくするため、現行の2015年版ISO9001規格に沿って、その「作り方」をたどってみることにします。


組織にQMSを構築するため、最初に行うのは、

・組織の状況や、利害関係者(顧客、社員など組織内の人々、提供者など)のニーズや期待を理解し、明確にすることです。そして、

・QMSを組織のどの範囲に構築するか(適用範囲)を決定し、

・その中にある「プロセス」(意図する結果を生み出すための一連の活動)を洗い出し、明確にします。


そして経営者のリーダーシップのもと、

・方針(品質方針)、組織及びその権限を確立し、

・目標(品質目標)と、目標を達成するための計画を策定します。


業務の現場では前出の、方針、目標、計画に沿って、「プロセス」を活用しつつ、

・製品やサービスを設計・開発・製造し、顧客に提供します。


QMS内の活動は、

・監視、測定され、分析や評価を行います。

・定期的に経営者による振り返り(マネジメントレビュー)も行います。

 

また、活動の中で発見された不具合や課題に対しては、

・修正や、再発しないよう是正処置を行い、

・仕組みの継続的改善に取り組みます。


さらに上記の活動を支援するため、以下の要素を明確にし、整備します。

・活動に必要な資源(ヒト・モノ・情報・資金など)

・関わる人々に必要な力量(知識と技能など)

・コミュニケーションの方法

・文書化した情報(方針や手順書、作業記録など)

 等


◆QMSを、実質的に経営の仕組みと捉える


上記から、現行のISO9001規格に基づくQMSは、

・組織の全般を通じて、その組織が提供する製品・サービスの品質を高め、維持する仕組み  


であり、それはつまり、

・高品質な製品・サービスを生産し提供するための経営の仕組み


実質的にそう捉えて差し支えないものと思います。


十数年前にお会いした、あるQMS関連のコンサルタントの方は、

「QMSが対象とする品質とは『経営品質』のことです。」


とおっしゃっていました。


また、数年前に参加したあるシンポジウムで、国内における権威の方のプレゼンテーションでは、

「QMS(経営システム)」

「QMS能力(経営管理能力)」


という表現も目にしました。(但し、ここまでズバリと表現する方は少ないのかもしれません。)


そのような経験から、私も

「QMSは、製品やサービスの品質を高めるにとどまらず、組織の経営の品質を高めるための仕組みでもあります。」といった説明をするようになりました。


とはいえ、そのように説明すると、一般に思い浮かべるQMSのイメージとかけ離れてしまい、聞いた方は釈然としない顔をすることが多かったです。


◆このブログをお読みいただいた皆様へ


このブログをお読みいただき、ありがとうございます。

QMS=品質マネジメントシステムを、なるべくわかりやすくご説明しようとを試みましたが、上記の文章だけで「なるほど」と思ってくださる方はまだ多くはない、そう思っております。


このサイトでは繰り返し、時間をかけて、QMSとは何か、現行規格に沿ったQMSの状況、どのようにすれば役立つものなのか、等をご説明してゆきたいと存じます。


引き続きご期待いただければ幸いです。


(Primary-f代表、JRCA登録・QMS審査員補)




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